著者への賛辞と作品への共鳴の思いを、「☆ Excellent，◎ Very Good，○ Good，△ Fair，×
Poor」
の記号にて表現していきます。
４月
４月６日◎「スピードシンキング」 鷲田小彌太著 三笠書店 2003ｰ4ｰ15
いつもながら、軽快に元気づける文章です。
「じっくり考えたい」が言い訳になっている。重要なのは、解決策を必要とする
ことだ。ついで、その解決策を「私が出す」という意欲である。
人が逡巡するのは自分のことだからだ。頭の巡りがわくるなる、回転が
鈍くなる原因の多くは、自分の事を自分で決めなければならない場合である。
５分間で答えることができるかどうか、が問題なのではない。５分間で出た
回答が、解答（ベストな回答）なのだ。完全無欠な回答を求めるなどというのは、
うぬぼれ以外のなにものでもない。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
４月５日○「人間の条件（上・下）」 森村誠一 著 幻冬社 刊 2003-3-5 第１刷
「作家生活40周年・300冊記念特別作品」と帯に書いています。
著者の小説には警視庁の棟居刑事と、新宿署の牛尾刑事が良く出てきます。棟居刑事
は数年前に妻子を強盗犯に殺害され事件は未解決のまま。
本書はオウムを想起させるカルト教団が、細菌や化学物質等で武装し東京攻撃を仕掛
け警察との攻防焦点となるが、警察は”信教の自由”に歯軋りする場面も。
ストーリーは、ＯＬ殺害、娘を教団に取られた両親と通りがかりの女性の拉致等々、
教団の犯行と思われる事件が続発。拉致犯人は、結果として棟居刑事妻子殺害犯人で
もあった。棟居刑事は怒りで犯人を射殺しようとするが、そこで牛尾刑事は思いとど
まらせようとする。
壮大なテロ事件を通して、「人間で有るべきための条件とは何か」を問う大作です。
しかし話の展開が大きくなりすぎ、焦点がボケ全体に散漫との感も・・・・・。
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月３１日☆「組織愛」中山幹夫著 2002-12-2 アルファポリス
子供の頃を思い出してみよう。「おおきくなったら何になりたいの」・・・
エンジニア、野球選手、看護婦・・かつて仕事は人生の夢だった、あなたは
いつから変わってしまったのだろう。
本当に社員ががんばる動機は実は報酬ではない。大切なのは、自分の力がチーム
への貢献に活かされる喜びである。組織に対する思いを、ストレートな表現で語っ
ています。素直に、今の仕事の仕方を見直しました。
人材が流動化する時代だからこそ、会社は、自分の可能性に挑戦し、チームのす
ばらしさを感じ、すばらしい仲間と出会う場である。
組織の変貌の６つのキーワード
１．揺るがない方針
２．言った以上は任せる
３．階層を超えた対話で組織の壁を低くする。
４．平等なチャンスと愛のある実力主義
５．伸びる可能性があるなら失敗しても使え
６．みんな活躍したいからと思っているからここにいる
当社のホストコンピュータは、３０数年来、富士通です。中央集権的な組織風土と、
個人の気持ちが伝わらない空しさは、ユーザーとしても同感できる部分が多く
重ねて、読んでいました。当然ですが、自分の社内も同様ですが。・・・
自分の思いを、６つのキーワードを中心に、行動して行こうと思います。
（会社の大晦日である３月３１日で、ベストタイミング）
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月２９日◎ 「風の果て（上・下）」 藤沢周平 著 文春文庫 2002-8-25 第18刷
江戸時代、同じ道場に通う4人の仲間が主人公。3人は嫡男ではなく、養子の口を待っ
ているが、一人は家老職の嫡男で将来が約束されている。
その後の人生模様は仲間内の斬りあい、執政職を巡る確執、決闘等々波乱万丈。策を
弄さず、自分に正直に生きることの大切さを教えてくれる一冊です。
本書の、（本の中での）現代と青春時代を行き来する手法も面白く感じた。
（藤沢周平は気軽に読める歴史小説です。通勤電車での読書に最適です）「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月２８日○「ろくべえ まってろよ」灰谷健次郎著 新潮文庫 平成２年2-15
「ろくべえ まってろよ」「マコチン」「マコチンとマコタン」「なんやななちゃん なきべそしゅんちゃん」
「子どもになりたいパパとおとないなりたいぼく」「しかられなかった子のしかられかた」
「さよならからみきぼうはうまれた」「ふたりはふたり」
の各短編集です。子犬の救助とか、あこがれの先生への思い、兄弟の思い、ペットを買いたいと
思う気持ち、大人になりたい気持ちなどの、こども時代の視点を、懐かしく思い出しました。
こどもごころに、結構、日々、色々考えて生きていたとも思いました。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月２７日○「糖尿病の話」田上幹樹著 ちくま新書 1997-10ｰ20
日本人のほとんどはインスリン非依存型糖尿病（non-insulin
dependents mellitus
:NIDDM)で、「糖尿病になりやすい素因」のある人に、肥満、過食、運動不足、
ストレス（加齢）などの誘因が加わって発症。
治療方法は、食事療法と運動療法
食事療法・・「糖尿病食事療法のための食品交換表」に基づいて、実施
糖質、蛋白質、脂質、ビタミンおよびミネラルの四種類の食品の
バランスを取ることで実施。当面は、２０００キロカロリー／日から
運動療法・・毎日実施が基本
特に、肩や銅や腰の大きな筋肉を動かす・・・歩く、自転車、プール、
テニス等です。食後の２０分から３０分の歩行が基本。
一番気になるアルコールは、２単位を目安にＯＫ（１単位＝８０キロカロリー）
ビールなら中瓶１本（500ml:２．５単位）、日本酒は１合（２．５単位）
ウィスキーは、ウィスキーグラス２杯（６０ｍｌ：２単位）
ワインはワイングラス３杯（２００ｍｌ：２単位）
焼酎２５度はコップ２分の１杯（１１０ｍｌ：２単位）
著者曰く・・・ｐ１７０
運動療法を毎日やれる人は、ビール一本程度の飲酒を続けても、糖尿病を良好に
コントロール出来る。別な言い方をすると、毎日運動療法を続けられる強い意志がある
人にとっては、一定量の飲酒など問題にする必要はありません。極論をすれば、
食事療法はたしかに大事ですが、運動療法を継続することのほうがずっと大事です。
了解！！！！！！です。
他に、「糖尿病の方へ」平田幸正著 主婦の友社 平成８年１２月１日 ４刷りも
参考になりました。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月２２日◎「続・住宅巡礼」 中村好文著 新潮社 2002-11-20
住宅巡礼で、その土地の雰囲気を知っていると、住宅内部へのイメージで浸り方が全く
違うのが解りました。チャールズ・ムーアと仲間達の「シーランチ」は、サンフランシスコから
北へ１６０ｋｍの海岸沿いに建つ写真を見て、ペブロビーチからカーメルまでの気温の低い
寒い海岸線を思い出しました。・・・結局、行ってみるしかないと言いたかっただけです。
「偉大な建築物の実感を得るための最上の方法は、その建物の中で目を覚ますことである。」
は、名言と思います。
それにしても、どの建物も、外の光を、環境を十分取り入れて、なんと豊かな時間が
各部屋に漂っているのでしょうか・・ 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月２１日◎「田中角栄失脚」 文春文庫 塩田 潮 著 平成15年1月10日 第２刷
昭和49年11月号の文芸春秋に掲載された、田中角栄に関する2本の記事で田中内は
崩壊してしまいます。２本の記事とは、
① 立花 隆 の「田中角栄研究 その金脈と人脈」
② 児玉 隆也 の「淋しき越山会の女王」
新聞記事での倒閣は過去にもあったが、雑誌の記事で内閣が倒れたのは初めて
とのこと。関係者もそこまでなるとは考えてなかったようです。
本書は昭和47年の田中内閣誕生から政権崩壊迄を主に、さらには角栄死去迄を書い
ていますが、2本の記事、とりわけ立花のグループの奮闘は超人間的でした。企画決
定後データ収集し、原稿締め切りを延ばしに延ばして、徹夜に次ぐ徹夜で完成しまし
た。次号の延ばすことも考えたが、潰されることを恐れ何とか11月号に掲載と相
なった次第。
一方の児玉は既に企画を暖めていてデータも持っていたので、後は原稿を書くだけ
で表面的には余裕だったが、編集長でさえ”ここまで書くの”と思うくらい、角栄の
女で金庫番の”佐藤 昭”に対して舌鋒鋭い記事であった。
角栄には功罪両面あると考えるが、ジャーナリストとして、「この人だけは首相に
しておけない」という思いで出来た記事といえます。「ペンの力」の凄さを痛感させ
る一冊です。
しかし最近はどうでしょう。政治家もジャーナリストもレベルが落ちた？無気力？
そうは思いませんか！ 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月１５日 「文芸春秋4月号」 特集は「中国最先端 -現地ルポ大特集-」
中国の不動産バブル、深刻な環境汚染、農村部の惨状、日本の新幹線売り込みの現実
等々８本が載っています。特に不動産バブルには驚かされます。08年の北京オリン
ピックと10年の上海万博までは、何とか持つでしょうがその後は心配です。環境汚染
も深刻です。地球規模の温暖化の原因にもなります。日本にも影響必至です。早く手
を打ってもらいたいというのが本音です。
「日本を見つめなおす最良の歴史書」識者60人アンケート
今後の読書の参考になります。60人の内7人が「坂の上の雲」を挙げています。私も
明治日本の高揚する国家と人々の姿が、生き生きと描かれた名著だと思います。
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月１５日◎「丈下に死す」 北方謙三 著 文芸春秋（01/11～03/04）連載
幕末天保年間の大阪が舞台で、世は不景気と米不足で騒然。主人公の光武利之は、江
戸旗本の妾の子で大阪奉行所へ赴任する。
そこで大塩平八郎の乱の首謀者平八郎の長男格之助と知り合い、光武は武術を教えな
がら懇意になる。平八郎は奉行所勤めを辞め、同志を教育しながら次第に政道批判を
強める。そして遂に天保八年に決起するが、一日で鎮圧されてしまう。光武は心情的
に大塩を声援するが、遂に決起には加わらなかった。光武に心を寄せる料理屋”三
願”の女将お勢の隠れた助力で、光武は料理人の道を目指す。
生きるのが難しい江戸末期、皆が社会に不満・不平を抱き、何かに不安を抱きながら
生きているが・・・・・・・・・・。
自分に忠実に生きることの難しさを教えてくれる、歴史小説といえるでしょう。
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月１０日☆「独立して成功する！「超」仕事術」晴山陽一著 ちくま新書2003ｰ3-10
全体の構成が、とても頭に、スートレートに届き、各章をうなずきながら
読みました。著者の真摯に物事に取り組む姿と、目的達成にこだわり、手
段を検討した結果が、納得の行く形で紹介されています。
What good is running if one is on the wrong road?
従来の企業は、人の空間と時間を拘束することによって、利益を生み出そ
うとした、これからの企業は、人の創造力を買うことによって生き延びる
とあり、椅子やディスクのレイアウトの検討も参考になります。知的生産
のための１３のヒントも役に立ちます。本を読むことも、知識のインプッ
トに励むのも、本当の目的は「はてな？」を増やすためなのです。
The importat thing is not to stop questioning.(アインシュタイン）
その中で、一番インパクトが有ったのは、
未来世界と関わりを持つためのとっておきのトレーニングは「今から
一時間先に起こることを予想する」でした。そばに置いて、
手に取る本と思います。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月 ８日○「続 礼儀作法入門」 山口 瞳 著 新潮文庫 2003-2-1 発行
礼儀作法入門の姉妹編で、前著が礼儀作法の”副読本”なら本書は”応用編”といえ
ます。
名刺の使い方、接待の心得、祝儀・不祝儀、子供の命名等々色々なことについて著者
の信念・考え方が述べられています。中には賛同しかねるのも有りますが・・・・・。
笑ってしまったのは、握手のしかたと性生活の知恵。握手では、トイレの後の手洗い
について、色々な考え方があるのだなあと・・・・・・。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月 ８日◎「一号線を北上せよ」 沢木 耕太郎 著 講談社 刊 2003-2-17 第１刷
一号線とは、ベトナムのホーチミンからハノイ迄の道のことで、その道の路線バスの
旅です。
以前のデリーからロンドンまでのバスの旅の姉妹編とも言えますが、ちょっと違います。
他に、パリに高名な写真家ロバート・キャパの足跡を辿る旅、フォアマン（ボクシン
グ）の最後のタイトルマッチの取材、「檀」を著した作家として、檀一雄がしばらく
滞在したスペインへの旅、アルペンスキーの取材のたび等から成ります。
これらはある人の足跡を追う旅であったり、スポーツを観戦する旅だったり、何の目
的もなく何かを求める旅立ったり色々ですが、心に何かを訴えかけてくるものがあり
ます。特に、ベトナムのバスの旅での、現地の人々や同じ旅行者との好悪さまざまな
ふれあいと、檀一雄の足跡を追ったポルトガルのたびは、人の弱さと有難さがなんとな
く感じられよかった思います。
著者は「少年時代から”移動”する物語に惹かれていた」と書いています。今のノン
フィクション作家／沢木耕太郎はこの頃から作られていたのかも知れません。
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月 ６日☆「戦場のピアニスト」ｳﾜﾃﾞｨｽﾜﾌ･ｼｭﾋﾟﾙﾏﾝ 佐藤泰一訳 春秋社 2003ｰ2ｰ1
新装版１刷
子供を連れて、今話題の「戦場のピアニスト」の映画を見るとの計画は、
読書後、とても重い内容で、良い作品だが、小学生には、早いと思い、中
止しました。
ポーランド放送局のピアニストとして、戦前、戦後に活躍した著者の
第二次世界大戦中の経験をまとめた本です。場面は、ドイツ軍に占領される
ワルシャワ市内での、ユダヤ人が住める地域をゲットーとして限定された
中での、ユダヤ人絶滅作戦の渦中から、本人だけが生き残るまでの壮絶な
生活の日々を、克明に、残した内容です。
ｹﾞﾄｰと言う限られた場面内での生活が、徐々に、生活環境が、人が、これ
でもかと言う程、変わっていく様子が語られます。同じ、ユダヤ人の中でも、
ドイツ側について、ユダヤ人を監視する人、ドイツ人も、戦局の変化で、
徐々に荒れて行く様子。敵、味方関係なく、人の命の尊大さが、踏み
にじまれる言いようの無い悲鳴が、悲しさが重く伝わります。
人が、人でなくなる・・・それが、戦争・・でも、始めるのは、人・・
・終えるのも・・人・・・止めるのも人しかありません。今がその時！ 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月 １日☆「蝉しぐれ」 藤沢周平 著 文春文庫 2001-8-5 第26版
初出は昭和61年、著者の地元の山形新聞。文庫本出版から10年で26版と読まれていま
す。
庄内藩がモデルと思われる海坂藩を舞台に、少年藩士の成長過程が、著者一流の暖か
さで描かれた名作です。
少年時代剣術と学問に励む主人公牧文四郎の身に、父の悲運が襲い、同時進行の形で
青年時代の淡い恋と友情を交え成長して行く様子がやさしく描かれています。しっか
りとした己の考えを持つこと、真の友人の有難さ、そしてなによりも挫折にめげずに
努力することの大切さを教えてくれる名著と言えます。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
３月 １日◎「中国大活用」 堺屋太一 著 ＮＴＴ出版 2003-1-8 初版
巨大な隣人中国の最近の発展は目覚しいものがあります。2008年の北京オリンピック
と、続く2010年の上海万国博で更に飛躍することは間違いありません。中国に限ら
ず、アジアの4つの小龍（韓国・台湾・シンガポール・香港）と、3つの新龍（タイ・
マレーシア・インドネシア）そして、真打の巨龍中国の工業化は、正にコンピュータ
の発達がもたらしたもので、明治維新後の日本のように教育で発展してきたのとは異
にしています。
”世界の工場”と呼ばれる中国の現状は、1960年代の日本に近い（一人当たりのＧＤ
Ｐ、電力消費量、エンゲル係数等々）。では、中国は日本の40年後を付いてくるのか
？その見方には3つあるとは著者の説。即ち、①脅威論 ②共栄論 ③挫折論。①は
日本にとっては打撃を与え、②は日本の産業を補完する有難い隣国、③は中国の経済
成長を疑うもの。さてその将来は如何に。
いずれにしても情報化社会進展が、日本の発展とは異なる成長過程を歩ませるように
も感じます。
本書を読んで気になったのは、中国の過剰供給体質の実態。確かに市場は大きいが供
給も大きく、デフレ化が心配されます。安価な中国製品が雪崩を打って今以上に日本
に入ってくれば、2007年から人口減少となるわが国は、永久に現下のデフレから脱却
できないシナリオになるのでは？ 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月２２日◎「礼儀作法入門」 山口瞳 著 新潮文庫 平成14年11月15日 第8刷
著者はサントリーの宣伝部員から作家に転向、直木賞も受賞しています。
単行本は昭和50年に発行されていて、文庫本も複数社から発行されています。著者曰
く、「本書は礼儀作法の副読本」。
礼儀作法とは「他人に迷惑をかけないこと」「まずは健康第一であれ」が基本とは著
者の言葉。
祝儀袋の渡し方・来客の心得・葬式の心得・祝辞・電車通勤・別れる等々について述
べています。
印象に残った話は、「夜遅くの酒飲客にはてきぱきと、時間をかけて大皿一杯の料理
は×」「通勤の天才（タイムカードが8：59で遅刻のしない人）は出世しない。サラ
リーマンには遅刻もサボりも必要」同意できます。等々 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月２２日 「文芸春秋 3月号」
128回芥川賞の「しょっぱいドライブ」が全文掲載されています。
60歳代の男性と、34歳の独身女性の奇妙な日常を描いていますが、正直なところ駄作
との読後感です。
石原慎太郎が「文学のダイナミズムの要因確保のために新人に期待するこの文学賞の
受賞作も、段々小振りになってきたという観を否めない。」といてます。最近の芥川
賞受賞作を読んでいると慎太郎氏と同じ様な印象を持たざるを得ないです。
ほかでは、高村薫と国正武重（元朝日新聞編集委員）の対談「小泉純一郎、最も危険
な宰相」を面白く共感を持って読みました。
公約無視、思いつきの丸投げ政治で、日本は何処へ行くのでしょうか。小泉内閣誕生
後、特に政治の世界で真剣な議論が少なくなったように感じます。「改革なくして成
長なし」と叫ぶばかりで、改革のその後の道筋が見えてきません。小泉総理に任せて
いては、日本の再建は有り得ないように考えます。
福田和也の「歴代総理の言語能力採点」で、小泉純一郎は、26点でワースト２です。
さもありなん。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月１９日◎「日本のゴミ」 佐野眞一著 2002-5-10 第四刷発行
廃車、旧ＯＡ機器、廃乾電池、古紙、建廃、残飯、ペットの死骸、そして核のゴミまで。
大都市の消費者の生活、文化にたずさわったモノ達が最終的に漂着する先は、決まって
大都市の周辺か、さもなくば人跡もまばらなさいはての土地だった。
また、ニュータウンといわれる新興住宅街の周辺には、いま「異物」を排除しようと
する気運が、恐ろしいほどの勢いで高まっている。それは、精神病院、老人ホーム
養護施設などの建設計画に対する住民の猛烈な反対運動に象徴的に現れているが
なかでも、ゴミ処分場はその典型といえる。
異常に早い高度消費資本主義の世の中に生きていて、自分の事さえ考える時間が
無い忙殺される社会に生きていることを、ストップモーションの様にとめて見せるのが
ゴミである。との著者の結びの言葉に、納得です。
いつもながら、著者の、川下から川上まで、詳細に事実を遡る内容の濃さに圧倒
されます。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月１１日◎ 「心では重すぎる」 大沢在昌 著 光文社カッパノベルス
新書版で600枚を越える超大作です。ハードボイルドでありながら、現代の悩める若
者のと真摯に対峙した一冊です。
薬物依存者更正施設で働きながら、一方で探偵業を生業とする主人公/佐久間公。一
世を風靡した漫画家の”まのままる”が突然連載を止め、世間から消えてしまう。”
彼の消息を探して欲しい”と言う、漫画家志望だったファンからの依頼を受けた佐久
間。更には渋谷を根城とし、薬を売買するヤクザと若者、この二つが絡み合って話は
展開する。
ストーリー展開の面白さと同時に、高校生で既にまともな社会とは相容れない女子高
校生との微妙な駆け引きと、若者を知ろうとする主人公。何か知ろうと人の心に踏み
込む「調査業/探偵」という仕事は、「生き方」と思っている主人公。危険を顧みず
自ら働く施設の患者の為に行動し、若者の為に更に深追いしてしまう佐久間。
著者曰く、「一度だけ、私の感じる今を、今の若者を描いてみようと思った。」と
は、佐久間を自己に準えているのでしょうか。考えさせられる一冊でもあります。
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月 ９日 ◎「マークスの山（上・下）」 高村 薫 著 講談社文庫 2003-1-24 第1刷
新刊書は93年発行で、その年の直木賞受賞作です。新刊書を読みそびれ、全面改稿の
文庫本をゲット。
帯に「警察小説の金字塔」とあります。小説の筋も大変面白いが、警察官の心理描写
や行動を、ある意味で警察官側から描いていてそれが本書の魅力にもなっている。
筋を簡単に言うと、昭和51年、南アルプスの広河原から少し離れた飯場で殺人事件が
起こるが、犯人と思しき作業員には記憶がない。それから16年後に都内で連続殺人が
発生。結果としては大学の裏口入学や交通事故に起因する、昭和51年の南アルプスで
の殺人事件が、平成4年の元山岳部員であった二人の法務官僚と老豆腐屋夫婦の死に
繋がり、さらに同じ山岳部ＯＢの弁護士や大学理事長さがからみ話は進展。また精神
に”暗い山”と”明るい山”を抱える殺人者マークスの登場が先を読み難くし、一層
面白さをましているといえる。その過程で警視庁刑事合田雄一郎の行動を中心に元義
兄の検事や同僚刑事・警察幹部とのやり取りが絶妙の味を醸し出して、話をいっそう
面白くしている。”警察小説の最高峰”とカバーに書いています。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月 ９日 ☆「住宅巡礼」 中村好文著 2002-3-5
新潮社 ７刷
こんな巡礼の旅もあるものだと、感心しました。こだわりとか、感性の大切さが
文章と写真からゆったりと伝わります。あっちこっち眺めているだけで、幸せな時間が流れる本です。
で、どの家も、一度は行ってみたくなります。
著者はあとがきで述べています。
貴重な旅から、住宅設計が、建築的な知識や、構想力や、専門技術だけでは、対処しき
れないことを悟りました。・・・なにより、人間の行動や動作をつぶさに観察し、複雑な心理の
綾を読み解き、市井の人々の喜怒哀楽に共感できる柔軟な心を持った「人間観察家」でなけ
ればならないことを教えられました。・・・・
住宅巡礼 ル・コルビュジエ の「小さな家」 スイス／コルソー １９２４年
フィリップ・ジョンソン の「タウンハウス」 アメリカ／ニューヨーク市 １９５０年
アルヴァ・アアルト の「コエタロ」 フィンランド／ムーラッツァロ １９５３年
リートフェルト の「シュレーダー邸」 オランダ／ユトレヒト １９２４年
フランク・ロイド・ライトの「落水荘」 アメリカ／ペンシルヴァニア州ベア・ラン １９３６年
アスプルンド の「夏の家」 スウェーデン／ステナス １９３７年
マリオ・ボッタ の「リゴルネットの住宅」 スイス／ティチーノ地方リゴルネット １９７６年
ルイス・カーン の「エシェリックハウス」 アメリカ／フィラデルフィア チェストナットヒル １９５９年－６１
ル・コルビュジエ の「休暇小屋」 フランス／カップ・マルタン １９５６年
「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
２月 ６日 ○「文科系にのための科学・技術入門」 志村史夫著 2003-1-20 第１刷
２１世紀の科学・技術に火急に求められるのは「文化系の素養」であり、これからの
科学・技術の望ましい進展には「文化系の人」の参加が不可欠で、さらに、「文化系の素養」
に欠ける科学者や技術者は真に人類、地球の為の貢献が出来ないを伝えたかったとあります。
筋道をたてて考える・・・・「文化系の人」と「理科系の人」の筋道に違いがある。
「文化系の人」・・筋道の基盤や判断の基準が、『時代』『社会情勢』『生活環境』など
によって変化、変動し得る。そして、その様な『変化』や『変動』は、
『その時の気分で決める』自分の行動を是認しがちになります。
「理科系の人」・・筋道の基盤は、『自然』の事象であり、その理屈を考える自然科学
から導かれる宇宙規模で普遍的な自然の摂理です。自分の行動を
『その時の気分で決める』ことはなく、また、そのような、『その時の
気分で決める』行動が是認される余地はない
分かり易い説明で、いつも、頭の整理になります。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
１月２８日◎「長期停滞」 金子勝 著 ちくま新書 2002-8-20 第１刷
シュンペーターの景気循環論では、３つの波動即ち、50年周期（コンドラチェフ循
環）と10年周期（ジュグラー循環）、それと3年周期（チキン在庫循環）があり、そ
れらが重なった時が大不況の時代と言える。バブル崩壊後の10年間は、市場主義を掲
げる主流経済学者や政府、官僚の政策が目ま
ぐるしく変わりすぎた。即ち、”景気回復⇒構造改革・規制緩和⇒景気回復⇒構造改
革・規制緩和”の繰り返しで、財政も実態経済も悪化の一途を辿っている。不良債権
も一向に減りそうにもないし、一方のアメリカの企業会計不信も深刻である。
大恐慌とバブル崩壊後を比べれば、大変よく似ている。
1920年 大戦景気の崩壊
1991年 バブル崩壊
1922年 銀行取付騒動
1994年 信組連鎖破綻と住専問題
1923年 関東大震災
1995年 阪神淡路大震災
1928年 米国バブル
1999年 米国バブル
1929年 ＮＹ株式暴落
2000年 ナスダックバブル崩壊
1930年 金再輸出解禁
2001年 金融・会計ビッグバン
といった具合で、現下の小泉改革は、当時の昭和恐慌に突入した政策と非常に類似し
ている。非常に危険な状態で歴史は繰り返すではなく、歴史に学ばなければならない
のに。歴史の教えに従えば、相互の信頼が崩れる時にデフレの泥沼に入ってゆくこと
になる。今求められるのは、信頼の回復である。いわば生活のセーフティーネット整
備、年金等老後の不安解消等である。つまり、”長期停滞”に応じた中期的戦略が必
要とは著者の弁。
最後に、”「構造改革」論議からは何も生まれてこない。長期停滞の時代にこそ、新
しいビジネスモデルが生まれてくる。”とも。
個人的には、少子高齢化でそのうち人口が減少に転ずれば、経済成長はほとんど期待
できずに、”デフレの長期化⇒日本の衰退 / 財政破綻”という最悪のシナリオに
なるのではと心配になりますが・・・・・。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
１月２５日◎「水の眠り 灰の夢」 桐野夏生著 文春文庫 2002-10-10 第14刷
昭和38年、オリンピック前の東京が舞台。トップ屋（出版社系週刊誌のトップ記事を
書く人。新聞社系の週刊誌は新聞記者から情報をとれるが、出版社系の場合は週刊誌
のスタッフが自ら取材をせざるをえず、傭兵的なトップ屋の出番となる）が、草加次
郎事件を取材するうちに女子高校生殺人事件に遭遇。容疑者にもされるが、職を賭し
て自ら真実を追求するストーリー。サスペンスタッチでありながら、オリンピック前
夜の東京のある意味での熱気が伝わり、まだエネルギッシュであった日本人が描かれ
ています。あとがきを読むと、モデルは梶山季之のようです。やくざの親分あり、白
樺派の巨匠とそのバカ息子あり、愉快犯の草加次郎事件と麻薬を絡ませたミステリア
スな一冊です。95年発行、９８年に文庫本が出て４年で１４版重ねています。
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１月１７日◎「デジタル書斎の知的活用術」 杉山知之著 2003-1-8 岩波アクティブ新書
知らないことが多くとても参考になりました。
１．静止画像の解像度は６４０＊４８０で充分。メールに添付は、３２０＊２４０
２．ビデオメモの投影は、５秒以内で、ワイドコンバージョンレンズ０．６倍の着装
３．検索エンジン、Ｇｏｏｇｌｅのイメージ検索
４．パワーポイントシンキング、で、「表示」でページフッターの自動日付設定と
ページを打つ、と、部屋が明るくても映像が見えるプロジェクターの準備
５．コンピュータは完成品になったことがない
６．外付けハードディスクがメインのバックアップ保存とオンラインバックアップサービス
☆
７．社内の機密を守るのは、まず、不可能・・・で、後で、発覚したら問題になる様な
事を企業では絶対にしない。ブローバンド時代に生きるビジネスパーソンとしては
これまで以上の企業倫理を求められている。
８．１００Ｂａｓｅｔのクロスケーブルでの乗り換え
９．ユビキタスの社会に向かっているだけに、意味を理解するために、デジタル無しの
道具も必ず使う 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
１月１６日 「文芸春秋 2月号」
新年特別企画”失わなかった10年、輝き続ける30人”は、各界の著名人でバブル崩壊
後も元気な30人の話です。そのうち、共感を持って読ん
だのは、塩野七生、野茂英
雄、小沢征爾、安倍晋三、鳥羽博道（ドトールコーヒー）等々です。バブル崩壊後、
日本人は自信を喪失し経済は縮小する一方ですが、所謂失われた10年間にがんばった
人々もいるのです。これらの人々は”自分の信念を持って
いる”、”自分のすべき
こと（やりたいこと）をはっきり持っている”人々だと思い
ました。
ノーベル化学賞の田中耕一の”ノーベル賞日記”も抱腹絶倒（ちょっと言いすぎ）、
面白い記事でした。 「読書２００３年上期詳細」ページ先頭
１月１６日◎「業界紙諸君！」 佐野眞一著 2000ｰ1-6 ちくま文庫
日本の産業構造の深さが、解ります。
３５００紙余りある業界紙のなかから、金融、コンニャク、玩具、ウナギ、宝石・貴金属
航空・防衛、音楽・芸能、ホテル・旅館、葬儀、美術、消防、防災、出版・書評を選んで
それを取り巻く、人間を中心に掘り起こしています。私たちの生活の中で何気なく存在して
いる商品の裏には、業界があり、その業界を浮き彫りにしているのが業界紙でした。
コンニャクとウナギが、面白く読みました。宝石・貴金属と美術界、お葬式の世界は、
何となく胡散臭く感じていたその内容出てきました。音楽のヒットチャートは知らなかった
で、航空、消防は、想像さえしていませんでした。
私が働いている業界も、ある意味では、マイナーですね。日本の産業構造の底辺の広
がりと、色々な人の人生があることの再確認できました。
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１月１４日☆「シェエラザード（上・下）」 浅田次郎 著 講談社文庫 2002-12-15 第１刷
時代は第二次世界大戦の頃。本来は太平洋航路を走る筈だった世界一の豪華客船”弥
勒丸”が、日本軍に徴用され病院船として、安全を保障されて連合国の俘虜用の物資
を運ぶ。その一方で、陸軍の勝手な意向でシンガポールから上海まで金塊を運び、そ
れが連合国の知るところとなり結果的に撃沈される。
これがストーリーであるが、物語は２兆円の金塊を積み沈没した弥勒丸引き上げの話
から始る・・・・。いま現在に生きるある人から、強制的に弥勒丸の引き揚げを求め
られる人、その人の15年前の恋人。一方で、昭和20年沈没された弥勒丸へ乗った2000
人の民間人と、その関係者のその後の運命というか生き様は、物語とはいえ涙を誘う
ものがあります。（浅田次郎の世界です）
本書はスリリングで意外性に富んだストーリーが興味を引きますが、多くの人々の数
奇に満ちた人生というか、人間関係が物語の縦糸になっています。
題名の”シェエラザード”はリムスキーコルサコフの交響詩の題名ですが、その粗筋
は、妻の不貞で女性に不信をもつ王様が女性を皆殺しにしようとするが、シェエラ
ザードが毎夜楽しい物語を聞かせ、王様は女性に対する復讐を忘れてしまうという、
アラビアンナイトの物語です。この交響詩が夜毎弥勒丸に流れます。連合国の魚雷で
沈没する寸前も・・・・。人間とは何か（自分と関わりを持つ人の存在は何か）を問
う崇高な一冊です。
（本書を読んでの気持ちを文章で十分表現できません。それ程素晴らしい一冊です。）
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